変圧器の呼吸作用と関連部品
変圧器も呼吸をしていること知っていましたか?
変圧器の負荷側には多くの電気機器が接続されています。
例えば150KVAの動力用変圧器、空調やELV・産業機械・ポンプ等が接続されます。
日中は工場が稼働しているため負荷率が高いですが、夜間は負荷率が低下します。
負荷率が高い時は多くの電流が流れ変圧器の温度が上昇しますが、
負荷率が低い時は電流がさほど流れないため変圧器の温度は外気温程度に低下します。
この負荷率の変動、温度の変動によって変圧器内部の圧力が変化し空気が出入りします。
さらに詳しく説明すると、
変圧器の絶縁油の温度が上昇することで、ガスが発生し変圧器内部の圧力が高まり
空気が変圧器の外に逃げます。
逆に絶縁油の温度が低下することで、変圧器内部の圧力が下がり
空気が変圧器の内部に侵入します。
呼吸作用の問題点
呼吸作用について解説しましたが、ここには問題点があります。
- 変圧器の容量よって負荷率の変動に差がある。
- 空気中に含まれる湿分が変圧器内部に侵入する。
・変圧器の呼吸作用によって空気が出入りしますが、空気中に含有される湿分も同時に侵入します。
酸素や湿分が絶縁油に触れることで酸化や絶縁低下を引き起こすことになります。
ある程度は変圧器の蓋についているパッキンが湿分を吸収してくれますが、
パッキンの劣化や天候によっては著しく絶縁油の劣化を早めることになります。
・呼吸作用に関しては業種や使用している負荷によりますが、基本的は容量の大きい変圧器の
方が負荷率の変動は大きいです。
ですので、容量の大きい変圧器には放圧弁や吸湿装置が取付けられています。
放圧弁
先にも説明したように変圧器の呼吸作用により内圧が上昇します。
圧力が上昇し続けると変圧器が変形したり破裂の恐れがありますので空気を放出する必要があります。
ですが、いちいち蓋を開けるわけにも行かないため放圧装置により変圧器外部へ放出します。
変圧器内部の空気が外部へ放出される時プシューっと音がします。
自然に放出されているところは見たことないですが、蓋を上に持ち上げるとプシューっと空気が抜けていきます。
ダイヘンさまの変圧器に関しては75KVA以上の変圧器には取り付けられているみたいです。
吸湿装置
「各部の説明」
・透明な容器:シリカゲル入れ
・オレンジの容器:油入れ
変圧器の呼吸作用により大気中の空気が変圧器の内部に侵入しますが、吸湿装置を経由します。
オレンジ容器の下部から空気が侵入し、油によって埃や汚れを除去します。
その後、シリカゲルを通り吸湿し変圧器内部に取り込まれます。
シリカゲルが乾燥している時は青色
吸湿後はピンク色に変化します。
使用中の変圧器に付属しているシリカゲルの色が変化している場合は交換してください。
変圧器内部に湿分が侵入すると絶縁が低下し絶縁油の劣化や変圧器の寿命を縮めることになりますので注意して点検しましょう。
絶縁紙
変圧器の巻線(コイル)には絶縁紙が巻かれています。
絶縁紙の役割としては、コイル間を絶縁し巻数比を一定に保つことです。
絶縁紙が劣化するとコイル間で短絡が発生し変成比が変化し電気機器に影響を及ぼします。
変圧器は長年の使用によって内部の材料が徐々に劣化し、絶縁性などの性能を保てなくなると寿命を迎えます。
材料の中で劣化による影響が大きい有機物材料の中で、絶縁油は交換可能であるのに対し、紙材料は交換できないため、変圧器の寿命において特に重要です。(交換可能品もある)
つまり!変圧器の寿命はほぼほぼ絶縁紙の寿命になります。
フルフラール分析
絶縁紙はセルロースという物質で構成されており、変圧器内で熱や酸素・水分の影響を受け
フルフラールやアセトン等を発生させます。
絶縁油中に溶け出したフルフラールの量を分析することで変圧器の劣化診断が可能です。
定期的に分析を行うことでグラフ化し劣化の傾向を把握することが可能です。
トップランナー2026(第三次判断基準)
エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)に基づき、トップランナー制度が2026年4月より
開始されます。これを受けて現行のトップランナー制度は廃止され現行の変圧器は出荷できません。
制度上は2026年4月より出荷が出来ませんが、実際はそれ以前から現行の変圧器は入荷しづらくなる事が予想されます。出荷できなくなるのが分かっているためメーカが期限を決めて製造を制限することになるかと思われます。
トップランナー制度とは
対象となる機器毎に基準を設定し、達成年度を定めて機器自体のエネルギー消費効率を高めて
いくように普及する制度です。
現行トップランナー制度(2014)→トップランナー制度(2026)に移行されます。
CO2の削減などの地球環境保全に対する取り組みです。
この基準に合格する変圧器にはこのシールが貼られています。
2014ver.のシールは見た事ある方が多いかと思います。
今後の変圧器の動向
変圧器の省エネ効果を上げるにあたり損失の低減が必須になります。
なかでも、負荷損(銅損)と無負荷損(鉄損)の低減が主軸になります。
上図にもあるように変圧器の程損失化に比例して変圧器サイズの大型化が予想されます。
また、変圧器の金額も高騰すると予想します。
銅損の低減には銅より導電率の高い材料を採用するか、コイル(銅)の断面積を大きくする必要があり、変圧器の大型化に直結しています。
対策としてコイルに巻かれている絶縁紙に耐熱紙を採用し、変圧器外部のひだ状の放熱板を小型化する事ができます。
コイルの断面積の拡大や耐熱絶縁紙の採用により金額が高騰すると予想しています。
また、変圧器の大型化に伴い考慮する必要がある内容があります。
それは、取替後のキュービクル内のスペースについてです。
現状より大型化するためキュービクルを増設する必要が出てくることもあるかと思います。
そうなると、工事手数料が大幅に上がることになります。
また、少し離れた場所に設置し受電からケーブルで引き込むようになり、
主任技術者としても管理しづらくなります。
点検に伺っているお客様の変圧器が古くなっている場合は、変圧器の取替を早めに伝えておいても良いかもしれません。
工事手数料若しくは省エネ効果(環境保全)のどちらを優先するかは主任技術と設置者の協議により決定しましょう。
B種接地工事
詳しい内容に関しては接地とは何かを参照ください!
今回は変圧器二次側のB種接地工事の接地線の太さを解説していきます。
「内線規程1350−5 B種接地工事の接地線の太さ」
※1:「変圧器の一相分の容量」とは以下の値を言う。
- 三相変圧器の場合は、定格容量の1/3をいう。
- 単相変圧器のV結線の場合
1.同容量のV結線の場合は単相変圧器一台の定格容量をいう。
2.異容量のV結線の場合は大きい容量の単相変圧器の定格容量をいう。※2:複数の変圧器で並行運転する場合の「変圧器の一相分の容量」は、各変圧器に対する※1の容量の合計値とする。
※3:低圧側が他線式の場合は、その最大使用電圧で適用すること。
例)単相三線式100/200Vの場合は、200V級を選択する。
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