地絡方向継電器とは
地絡方向継電器(DGR) JIS C 4609-1990 制御器具番号:67
現場では「67」や「DG」と呼ぶことが多いと思います。
地絡方向継電器は、高圧電路や機器に異常が発生し、高圧系統で地絡が発生した時にそれを検出する機能があります。
また、地絡電流の位相から「構内地絡」か「構外地絡」かを判断する機能が備わっています。

地絡継電器は高圧電路や機器の絶縁低下による地絡を検出する機能がありますが、地絡方向継電器には「構内地絡」「構外地絡」を判別し動作する機能があります。
地絡継電器では、「構外地絡」の場合でも動作することがあるため、このような不必要動作を防ぐために存在します。
関連機器と地絡継電器の動作
地絡方向継電器は単体だけでは全く意味がありません。
異常を検出するだけでが意味がないということです。
継電器の動作で開閉器や遮断器が開放することで保護が完結します。
関連機器について説明します。
零相変流器(ZCT)
地絡継電器は高圧系統の地絡を検出する機能があると解説しましたが、厳密に言うと
検出しているのは零相変流器です。
零相変流器に地絡を検出し、検出分を地絡継電器に入力します。
そして、入力分が設定値を上回っている場合に地絡継電器が動作します。

ZCTはコイルです。発生した地絡電流の大きさに応じてZ1・Z2端子に誘導電圧が発生し、ZCTからGRまでの配線を通り継電器に入力されます。
その入力された電圧が地絡継電器の動作の判断材料になっています。
零相変圧器(ZPD)
地絡時に発生する零相電圧を検出します。
コンデンサ型とがいし型の2種類がありますが、現在はがいし型が主流かと思います。
地絡方向継電器に関しては零相変圧器の設置が必要です。
ZPDで検出して変換器を経由して継電器に零相電圧を入力します。
開閉器・遮断器
高圧系統に地絡が発生し地絡方向継電器が動作し開閉器若しくは遮断器が開放し保護が完結します。
つまり、事故点への電気の供給をストップすることで地絡事故からその他を保護できます。
そのためには地絡方向継電器と連動する開閉器若しくは遮断器の存在が必須です。
地絡方向継電器のバック端子と結線

Z1・Z2:ZCTから配線、零相電流入力端子
Y1・Y2:ZPDから配線、零相電圧入力端子
P1・P2:制御電源端子
a・c:接点、警報やトリップ回路へ
M・N:入力した零相電圧を他継電器へ分岐させる端子

外部接続図です。
Z1・Z2・Y1・Y2への配線ですが極性には注意が必要です。
逆向きに配線すると不必要動作や不動作の原因になります。
位相特性


零相変圧器(ZPD)にて検出した零相電圧を基準電圧として、零相電流の位相を判別します。
電流の位相が進み130°〜遅れ35°の範囲であれば「構内地絡」として継電器が動作します。
逆に、電流の位相が範囲外であれば「構外地絡」として継電器は動作しません。
これが地絡方向継電器の強みです。


地絡方向継電器の動作範囲については上図の通りです、ただしメーカーによって位相特性図は変動します。また、高圧系統の接地方式によっても変動しますのであくまで参考です。
また、一般的な高圧非接地系統での位相特性になります。
最高感度角:継電器の動作感度が一番高い位相角です、大体30°〜45°くらいかと思います。
事故電流の位相が進み45°くらいですので大体同じくらいです。
継電器試験において最高感度角にて試験を実施します。
もらい事故「構外地絡による動作」
「GR」と「DGR」の決定的な違いはもらい事故の有無です。
・もらい事故とは
構内電気設備の劣化による地絡成分ではなく、構外電気設備の地絡成分を「GR」が検知して動作すること。
継電器が動作しているため当然、停電を伴います。
ただし、この停電の原因は「構外地絡」のよるものなので原因調査をしても原因不明で復旧することになります。
⇨本来「構外地絡」では継電器が動作する必要がないため「不必要動作」や「もらい事故」と言います

地絡電流は静電容量を介して様々な回路に分流します。
例えば需要家内に戻ったり、他需要家に流れ込んだりします。
他需要家に流れ込むという部分が「もらい事故」の原因になっている訳です。
また、この現象は高圧ケーブルの長さに比例して事故率が増加します。
電流の流れに注目すると、他需要家の地絡電流が高圧ケーブルの遮蔽層から自構内に侵入しZCTを通過します。
↑これがカラクリですね。
高圧ケーブルが40mを超えてくるようであればDGRを推奨します。


高圧ケーブルの導体と遮蔽層がコンデンサの電極部分、間の絶縁体がコンデンサの絶縁体部分と見かけ上のコンデンサとして静電容量が発生します。
また、この静電容量分はケーブルが長くなればなる程多くなるため多くの電流が流れるようになり、「もらい事故」の確率が高まります。
試験項目
動作電流値試験
継電器の整定電圧値を最小とし,零相基準入力装置の一次側に三相一括で,整定電圧値の150%の電圧を印加し,零相変流器一次側の任意の1線に,製造業者が明示する動作位相の電流を流し,これを徐々に変化させて,継電器が動作したときの電流値を測定する。
JIS C 4609-1990
良否判定
動作電流値は整定電流値に対し,その誤差が±10%の範囲になければならない。
JIS C 4609-1990
動作電圧値試験
継電器の整定電流値を最小とし,零相変流器一次側の任意の1線に整定電流値の150%の電流を流し,零相基準入力装置の一次側に三相一括で,動作位相の電圧を印加し,これを徐々に変化させて,継電器が動作したときの電圧値を測定する。
JIS C 4609-1990
良否判定
動作電圧値は整定電圧値に対し,その誤差が±25%の範囲になければならない。
JIS C 4609-1990
位相特性試験
継電器の整定電流値及び整定電圧値を最小とし,整定電圧値の150%の電圧を加え,整定電流値の1 000%の電流を流し,電流の位相を変えて継電器が動作する位相角を測定する。
JIS C 4609-1990
良否判定
動作する位相及び不動作となる位相は,製造業者が明示する範囲になければならない。
JIS C 4609-1990
動作時間試験
零相基準入力装置の一次側に三相一括で,整定電圧値の150%の電圧を,また,零相変流器一次側の任意の1線に動作位相で整定電流値の130%の電流を,それぞれ電圧と同時に急激に通電して,継電器が動作する時間を測定する。
JIS C 4609-1990
良否判定
試験電流(%) | 動作時間(s) |
130% | 0.1~0.3 |
慣性特性試験
継電器の整定電流値及び整定電圧値を最小とし,零相基準入力装置の一次側に三相一括で,整定電圧値の150%の電圧と,零相変流器一次側の任意の1線に動作位相の整定電流値の400%の電流とを,同時に急激に0.05秒間通電して継電器の状態を調べる。
JIS C 4609-1990
良否判定
慣性特性試験を行ったとき,継電器は動作してはならない。
JIS C 4609-1990
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