どうも!あべちゃんです!
年次点検は基本的には停電状態で点検・試験を行います。
感電の危険はないと錯覚してしまいますが、絶縁測定時や停電操作や復電操作など、
感電するタイミングはいくらでもあります。労働安全衛生規則等の規程についても解説します。
一緒に勉強頑張りましょう!
労働安全衛生規則による安全のためのルール
高圧(直流にあつては七百五十ボルトを、交流にあつては六百ボルトを超え、七千ボルト以下である電圧をいう。以下同じ。)若しくは特別高圧(七千ボルトを超える電圧をいう。以下同じ。)の充電電路若しくは当該充電電路の支持物の敷設、点検、修理若しくは操作の業務、低圧(直流にあつては七百五十ボルト以下、交流にあつては六百ボルト以下である電圧をいう。以下同じ。)の充電電路(対地電圧が五十ボルト以下であるもの及び電信用のもの、電話用のもの等で感電による危害を生ずるおそれのないものを除く。)の敷設若しくは修理の業務(次号に掲げる業務を除く。)又は配電盤室、変電室等区画された場所に設置する低圧の電路(対地電圧が五十ボルト以下であるもの及び電信用のもの、電話用のもの等で感電による危害の生ずるおそれのないものを除く。)のうち充電部分が露出している開閉器の操作の業務
労働安全衛生規則 第316条(特別教育を必要とする業務)
まず、上記に対象する方は特別教育を受ける義務があります。
今回の議題は年次点検(停電点検)ですので当然対象となります。
事業者は、電路を開路して、当該電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行なうときは、当該電路を開路した後に、当該電路について、次に定める措置を講じなければならない。
当該電路に近接する電路若しくはその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業又は当該電路に近接する工作物(電路の支持物を除く。以下この章において同じ。)の建設、解体、点検、修理、塗装等の作業を行なう場合も同様とする。労働安全衛生規則 第339条
- 開路に用いた開閉器に、作業中、施錠し、若しくは通電禁止に関する所要事項を表示し、又は監視人を置くこと
- 開路した電路が電力ケーブル、電力コンデンサー等を有する電路で、残留電荷による危険を生ずるおそれのあるものについては、安全な方法により当該残留電荷を確実に放電させること。
- 開路した電路が高圧又は特別高圧であつたものについては、検電器具により停電を確認し、かつ、誤通電、他の電路との混触又は他の電路からの誘導による感電の危険を防止するため、短絡接地器具を用いて確実に短絡接地すること。
- 基本的には通電禁止の所要事項を表示する事が多いと思います。
監視人を置くのは人員が入りますし、電柱上にある開閉器には施錠できません。 - 「短絡接地器具を取り付けたら放電できてるやん」と思ってしまいますが遮断器が自動開放される場合には放電できていません。確実に放電して下さい。
(コンデンサ系統VCSは常時励磁式なので停電したら切れる) - 短絡接地器具が取り付けられるまでは活線回路です。絶縁用防具の装着や
絶縁用保護具着用が義務です。
事業者は、高圧の充電電路の点検、修理等当該充電電路を取り扱う作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者について感電の危険が生ずるおそれのあるときは、次の各号のいずれかに該当する措置を講じなければならない。
- 労働者に絶縁用保護具を着用させ、かつ、当該充電電路のうち労働者が現に取り扱つている部分以外の部分が、接触し、又は接近することにより感電の危険が生ずるおそれのあるものに絶縁用防具を装着すること。
- 労働者に活線作業用器具を使用させること。
労働者は、上記の作業において、絶縁用保護具の着用、絶縁用防具の装着又は活線作業用器具若しくは活線作業用装置の使用を事業者から命じられたときは、これを着用し、装着し、又は使用しなければならない。
労働安全衛生規則 第341条(高圧活線作業)
事業者は、電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者が高圧の充電電路に接触し、又は当該充電電路に対して頭上距離が三十センチメートル以内又は躯側距離若しくは足下距離が六十センチメートル以内に接近することにより感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該充電電路に絶縁用防具を装着しなければならない。
ただし、当該作業に従事する労働者に絶縁用保護具を着用させて作業を行なう場合において、当該絶縁用保護具を着用する身体の部分以外の部分が当該充電電路に接触し、又は接近することにより感電の危険が生ずるおそれのないときは、この限りでない。労働者は、前項の作業において、絶縁用防具の装着又は絶縁用保護具の着用を事業者から命じられたときは、これを装着し、又は着用しなければならない。
労働安全衛生規則 第342条(高圧活線近接作業)
公益社団法人 日本電気技術者協会HPより
絶縁用防護具の使用に関しては事業者側の義務になります。また、事業者により装着及び着用の指示を受けた場合は必ず着用して下さい。というよりも指示がなくとも判断できるのがベストです。自分の身は自分で守りましょう。その上で他者の安全も守りましょう。
高圧絶縁用防護具や活線作業用器具等は定期自主検査による絶縁性能の確認が必要です。
(労働安全衛生規則 第348条 第351条)
また、停電点検と同時に機器の取替工事がある場合もあるかと思いますがその際も規程あります。
(労働安全衛生規則 第350条)
以上が労働安全衛生規則の規程になります。他のもありますが厳選して紹介しました。
停電操作が完了すれば感電事故の危険性は下がりますが、絶縁測定時等の電圧印加時には十分に周知するようにしましょう。
また、停電操作中の感電事故も発生しやすいです。失念や誤解によって活線回路を触りに行き感電死亡事故に至った事例もあります。作業指揮者の指示のもとで安全を最優先で作業して下さい
年次点検(停電点検)について
年次点検は、基本的には停電状態により点検を実施するものであり、
点検周期に応じて点検範囲を決める事ができます。
自家用電気工作物 保安管理規程 資料16.点検周期に関する各種技術資料より一部抜粋します。
建築保全業務共通仕様書(一般財団法人建築保全センター)
上記技術資料より高圧変圧器の点検項目及び周期が記されています。
絶縁破壊電圧試験 | 3年 | 器を絶縁油で満たしそこに設置した電極間に徐々に電圧を印加する試験 |
酸化度試験 | 3年 | 絶縁油の酸化試薬を用いて酸化度を確認する試験 |
上記の技術資料に基づき点検周期を決定する事ができます。
今回は一部を抜粋しましたが他にも様々な技術資料が参考として記載してあります。
例えば、ケーブルや遮断器・断路器・開閉器等です。
点検項目
年次点検は月次点検について知るで解説した内容に加え以下の点検・試験を行います。
- 外観点検
- PCB(ポリ塩化ビフェニル)を含有する電気工作物の確認
- 測定・試験
A.接地抵抗測定
B.絶縁抵抗測定(低圧・高圧)
C.保護継電器・遮断器試験
D.非常用予備発電装置試験
E.蓄電池試験 - 機器点検
- 電気使用場所の点検
- 月次点検等の通常の使用状態(通電状態)で目視による点検が不可能な部分の点検
(がいし・ブッシング・外箱・端子の緩み・過熱・小動物侵入箇所etc) - 現時点では高濃度PCBの処理は完了しているはずということで低濃度PCB含有機器の調査
(変圧器やコンデンサ・リアクトル・放電コイル等の油入機器の低濃度PCB含有の有無を確認する必要があるが含有の恐れのある年代についてはメーカーにより異なる。また、現状では産廃業者の多くは年代が外れている機器でも調査結果がないと処分を拒否する傾向がある。2024.02) - A.接地抵抗測定について知る及び接地とは何かをご参照下さい。
B.絶縁抵抗測定について知る及び絶縁とは何か・E方式とG方式についてを参照下さい。
C.(D)GR・OCR・LGRその他の継電器及び遮断器との連動作を試験します。また、電力会社との保護協調を確認する。
D.非常用予備発電機の自動起動や自動停止及び運転中の電圧・周波数・回転数等を読み取り発電機の正常な運転を確認します。また、ダブルスローやマグネットコンダクタの切替りを確認します。
E.蓄電池の外観点検及び電圧や比重の測定・精製水の補充等を行います。 - 高圧受電設備の点検をします。外観点検や清掃、端子部の加熱や緩みの確認及び操作状態の確認や保護機能(LBSストライカ連動動作)の確認を行います。
- 電気機械器具の接地測定や分電盤内の点検・絶縁測定を行います。
どうも!内容が重たくなってきましたね。
点検内容に関しては今回の投稿では書き切れないので代表的な部分を記載しています。
年次点検では通電状態では点検出来ない箇所の点検を忘れず行いましょう。
月次点検でも点検できるように何か工夫しても良いかも知れません。
機器点検のポイントに関しては別の投稿で解説していきます。
PCBに関しては処理期限が決まっています。(2027年3月末)確実に処理して下さい。
また、使用中及び保管中の場合は国や市に対しての届出が必要です。
作業前ミーティング
点検前には必ずミーティングを行うようにしましょう。
作業員全員に作業の内容・手順・充電箇所の有無等を説明する事で事故を予防します。
事故を予防するというのは作業員の怪我はもちろん電気設備を不用意に破損させないことを含めです。
以下に私のミーティングの内容を順番で記載します。
- 体調確認・服装点検・検電器チェック
- 器材数量確認
- 単線結線図との照合
- KY(危険予知)
- 作業時間・活線箇所の有無・他業者の作業
- 作業内容・作業分担
- 停電・復電操作手順・短絡接地器具取付箇所
- 作業指揮命令系統
- 質問
作業前ミーティングの質で作業員の作業のしやすさが変わると思っています。
やはり作業の内容や流れを把握してるだけで私自身も作業しやすいです。
ズボンの裾を引きずっていると作業時に転倒する恐れがあるので事前に点検しましょう。
また、検電器を携帯しているかと思いますが電池が無ければ意味ないです。
作業関係だと、活線箇所・他業者の作業・内容・分担・手順は作業員も知りたいはずです。
停電操作・復電操作
停電操作は作業指揮者の判断によると思いますが、
今回は低圧から停電するパターンと高圧から停電するパターンを解説します。
それぞれにメリット・デメリットがあります。迷ったら無難に低圧から停電しましょう。
低圧から停電
ごくごく普通の流れなのかなと言う印象です。
停電のOK出たから低圧ブレーカ開放から入る流れですよね、
この場合には動力→電灯の順で停電して下さい。
動力機器は回転機器が多いです。回転機器か高速で回転しているのに照明が消えると、
機械に巻き込まれて大怪我を負わせてしまう恐れがあります。
また、全てのブレーカ開放後にB種接地で漏えい電流を測定し、1m A以下の場合は
変圧器の二次巻線〜ブレーカ電源側の絶縁測定が省略可能です。(こちらで解説)
ただし、開閉サージにより機器の破損に繋がります。
高圧から停電
大きい現場とかは遮断器やPASで停電したりしますよね。
この方法は停電までが早いです、作業に費やす時間が多くとることができます。
大きい設備だとブレーカが多くて停電操作に時間がかかりますし時間に余裕がなかったりします。
この場合は変圧器の二次巻線〜ブレーカ電源側の絶縁が確認できないため測定が必要です。
ただし、高圧で停電する場合は開閉サージを変圧器の巻線が吸収してくれるメリットがあります。
小さい現場は低圧から、大きい現場は高圧からと言うイメージが個人的にはあります。
絶縁測定の省略や開閉サージの吸収等のそれぞれのメリットを加味して決定しましょう。
開閉器(PAS)で停電するよりも遮断器を開放してから開閉器(PAS)を開放する事で開閉器の負担を下げる事が可能です。(PASよりVCBの方が定格開閉頻度が多い)
復電操作
復電する際には器材数量の確認・作業箇所の忘れもの短絡の有無の確認・周知しましょう。
器材を忘れて受電、短絡し波及事故に至った事例もあります。
株式会社 双興電機製作所さまの短絡検知器とかシンプルで使いやすいですよ。
また、復電する際には作業員や他業者等への周知を忘れずに行いましょう。
無停電による年次点検の考え方
原則、年次点検は1年に1回以上 停電して実施することが望ましいが、近年は停電時間を確保する事が
難し苦なる一方で電気設備の製造技術の進歩により信頼性が向上しています。
そのため、停電を伴う点検を3年に1回以上の頻度にする事ができます。
ただし、電路の絶縁状態を監視し適切な診断や問診が行われているなど合理的な判断に基づき
劣化機器の補足に努める中で電気主任技術者が判断する。
本当は無停電点検についての条件を解説したいのですが書き切れないので別の投稿で解説します。
今回の記事では停電による年次点検を3年に1回に緩和できると言うことを紹介しておきます。
もちろん、毎年停電して精密な点検をする方が望ましいですが、停電や復電のタイミングで機器へのストレスがかかるのも事実です。最近では特定メーカのケーブルが停電点検により絶縁破壊を起こし復電に時間を要するような事象も発生しています。
電気主任技術者としては色々な要素を考慮した上で判断していきたいですね。
続けて登場失礼します!どうも!あべちゃんです!
今回の内容は重たくなりましたが工事・維持及び運用について非常に重要な内容です。
しっかりと覚えておきましょう。
また、無停電による年次点検や機器点検・継電器試験等については今後投稿にしていきますのでご確認ください。どうもお疲れ様でした!
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