どうも!あべちゃんです!
高圧設備の保守管理をしていくうえで電気設備の取替工事に立ち会うことや試験をする事が少なからずあるのかと思います。
文字ばっかりなのでご注意ください!頑張りましょう!
絶縁耐力試験
「電路は、大地から絶縁しなければならない」電気設備技術基準 第5条
上記に基づき機器の絶縁を確認します。それが、絶縁耐力試験です。
基本的には竣工試験や取替工事と同時に試験をすることになりますが、省略することも可能です。
ただし、条件があります。条件については後ほど解説します。
また、耐圧試験を実施しておく方が信頼性は高いです。
関連規程
高圧又は特別高圧の電路は、以下のいずれかに適合する絶縁性能を有すること。
- 1-1表に規定する試験電圧を電路と大地との間に連続して10分間加えたとき、これに耐える性能を有すること。
- 電線にケーブルを使用する交流の電路においては、下表に規定する試験電圧の2倍の直流電圧を電路と大地との間に連続して10分間加えたとき、これに耐える性能を有すること。
電気設備技術基準 解釈15条
最大使用電圧が7000V以下の電路 交流の電路 最大使用電圧の1.5倍 最大使用電圧が7000V以下の電路 直流の電路 最大使用電圧の1.5倍の直流
若しくは、1倍の交流最大使用電圧が7000Vを超え
60000以下の電路最大使用電圧が15000V以下の
中性点接地式の電路最大使用電圧の0.92倍
の電圧最大使用電圧が7000Vを超え
60000以下の電路上記以外 最大使用電圧の1.25倍
の電圧
開閉器・遮断器・電力用コンデンサ・誘導電圧調整器・計器用変成器その他の器具の電路並びに発電所又は変電所、開閉所若しくはこれらに準ずる場所に施設する機械器具の接続線及び母線は、以下のいずれかに適合する絶縁性能を有すること。
電気設備技術基準 解釈第16条
- 使用電圧が低圧の電路
- 交流の接続線又は母線
- 絶縁耐力の確認
- 器具等の電路
- 逆変換装置
交流
交流にて試験する場合( 例.6600V )は印加電圧が10350Vになります。
式)最大使用電圧=6600V×(1.15/1.1)
試験電圧=最大使用電圧×1.15=10350V
当然ですが、印加部が近い場合は絶縁用保護具は必ず使用して下さい。
高電圧を取扱う試験のため、試験器操作者にも使用させて下さい。
堅いようですが、10340Vでは試験として成り立っていませんので注意しましょう。
試験器の容量算定
高圧ケーブルの構造上、静電容量が発生します。
この静電容量を通じて電流が流れることになるためケーブルの長さに応じて試験器を選定します。
まず、今回はムサシインテックさまのIP-R型を参考にします。
①IP-R 1500の場合、定格電圧=120V 定格電流=12.5A
①R-1115:昇圧用トランス 1.5KVA 巻数比1:100
②IP-R2000の場合、定格電圧=120V 定格電流=16.6A
②R-1220:昇圧用トランス 2.0KVA 巻数比1:100
例)CVTケーブル40m 0.32μF/km
充電電流Ic=2πfcVt=2×3.14×60×(0.32μF×40/1000)×10350×3
Ic=0.1497A=149mA
この場合の試験器の選定はIP-R2000がベストです。
IP-R2000の定格電流をトランスの2次側に換算すると、
(16.6A/100)×1000=166mA
100:巻数比を割ります。
1000:AをmAに換算しました。
逆に充電電流をトランス一次側に換算すると14.9Aとなります。
例)CVT ケーブル60m 0.32μF/km
充電電流=223.5mA
この場合の試験器はIP-R2000では容量不足です。
じゃあ回路にリアクトルを追加すると? 例)DR-1220MH 200H(ヘンリー)
IL:Vt/(2πfL)=10350/(2×3.14×60×200)=0.137A=137mA
回路に存在するケーブルの静電容量分をリアクトルにより打ち消す仕組みです。
I=Ic-IL=223.5-137=86.5mA
ケーブルの耐圧においては試験器の容量を見直す若しくはリアクトルを接続することで交流での耐圧試験が可能になります。
ここでの注意点は高圧設備一括で耐圧試験を実施する場合は機器での漏れ電流分も増えるので試験器の容量には注意して下さい。
10分間も続けて使用するので試験器の内部コイル焼けると思います。
若しくは、主幹のブレーカが切れます。
交流で厳しいようであればケーブルに限っては直流での試験も可能です。
ちなみにですが、ケーブルの静電容量に関してですが、こちらを確認してもらうかケーブルの構造を
想像して下さい。導体ー絶縁体ー遮蔽層が見かけ上のコンデンサとして働き、静電容量を持ちます。
コンデンサも電極の間に絶縁層がありますよね。
理論上はケーブルが長いほど静電容量が大きくなります。
注意点
もちろん試験においては注意点があります。
以下にいくつか紹介しますので覚えておきましょう。
高電圧
試験においては10350Vを電路に印加することになります。
こちらの「労働安全衛生規則による安全のためのルール」でも紹介したように高圧の電路に接触
若しくは接近する場合、絶縁用保護具の着用義務があります。
電路に電圧が印加されているか確認するために検電を行いと思いますが、
もちろんその際も高圧ゴム手袋の装着が必要です。
試験回路は形成できてる?
これは聞いた話ですが、試験器側の結線ミスにより試験器側に高電圧が励起されたという事例が
ありました。やはり試験器側も高圧ゴム手袋の装着は必須ですね!
そもそも結線ミスをしなければ良いんですけど。
また、試験回路側ですが印加したい機器全てに電圧が印加されていないと、改めて試験する必要が
あります。例えば、VCB開放していたらそれ以降は印加されていませんよね。
連続10分ですから、かなり時間の無駄になります。
電圧印加前には必ず結線及び試験回路の確認を行いましょう。
周知はできてる?電柱側は?
めっちゃシンプルに!周知しましょう。安全監視しましょう。
竣工試験や取替工事だと工事会社が電気設備の工事をしている事もあろうかと思います。
絶対に周知して下さい!でないと誰か感電させてしまうことになりますよ!
電柱側の安全確認が抜けている事もあります。電柱で誰か作業していなくても塗装屋さん含め様々な
業者の方が作業をしています。工事業者の休憩のタイミングで試験を実施するのが好ましいです。
Tr2次巻線のアースとブレーカの開放
まず大前提ですけども機器の接地工事が必須ですよね、接地工事が施されている事を確認した
上で耐圧試験を実施しましょう。
なかでも、変圧器の2次巻線のB種接地工事を確認して下さい。
まず、変圧器は一次巻線にかかる相間電圧が2次巻線に誘起されますよね。
ですが、耐圧試験での印加回路は機器と大地間です。つまり通常は2次巻線に電圧は発生しません。
なんですが!変圧器2次巻線のB種接地工事が施工されていない場合、2次巻線に高電圧が誘起され、
低圧回路を破損させる恐れがあります。低圧ブレーカを投入していると低圧機器の破損につながります
まず、接地工事を確認してから耐圧試験を行うことを徹底して下さい。
直流
交流にて試験する場合( 例.6600V )は印加電圧が20700Vになります。
式)最大使用電圧=6600V×(1.15/1.1)
試験電圧=最大使用電圧×1.15×2=20700V
関連規程でも解説した通り、直流の場合は交流の試験電圧の2倍です。
直流の場合、誘導作用がないため純粋な漏れ電流がメータに表示されます。
大体ですけど、◯◯μAとかそんなもんです。
ただ、雨の中で試験する場合は表面リークにより結構電流が流れるみたいです。
試験ができない事もあるみたいです。
注意点
需要場所においては、基本的には交流電路がメインになるかと思います。
なので直流での試験の場合は20700Vでの試験になるかと思います。
あくまで、直流での試験はケーブルにのみ適用することが可能です。
高圧機器に印加した場合は定格電圧を超えて10分間も印加する訳なのでほぼ確実に破損します。
また、印加確認する場合は直流用の検電器を使用して下さい。
交流用を使用しても検電器は反応しませんのでご注意ください。
絶縁耐力試験の省略条件
開閉器・遮断器・電力用コンデンサ・誘導電圧調整器・計器用変成器その他の器具の電路並びに発電所又は変電所、開閉所若しくはこれらに準ずる場所に施設する機械器具の接続線及び母線は、以下のいずれかに適合する絶縁性能を有すること。
電気設備技術基準 解釈第16条 第6項
- 使用電圧が低圧の電路
- 交流の接続線又は母線
- 絶縁耐力の確認
- 器具等の電路
- 逆変換装置
電気設備技術基準解釈第16条第1項から第5項までに絶縁耐力を定めている主要機器以外の諸器具や接続線・母線などの電路の絶縁性能を定めています。
ただし、1〜5に適合する場合となっており、3及び4は各機器が所定の性能に適合すれば耐圧試験による性能判定をしなくても良いことになっています。
ここで言う所定の性能と言うのは、JESC E 7001「電路の絶縁耐力の確認方法」です。
JESC E 7001「電路の絶縁耐力の確認方法」の基づき絶縁耐力試験を実施したことを確認できたものについては、常規対地電圧を電路と大地間に連続して印加する事ができる
「判定基準」
JESC E 7001「電路の絶縁耐力の確認方法」によって試験を実施した場合には、常規対地電圧を連続して10分間加え絶縁に異常がないこと。
自家用電気工作物保安管理規程 資料4.竣工検査方法と判定基準の例示
以上より、JESC E 7001「電路の絶縁耐力の確認方法」に基づいて試験する場合は常規対地電圧を連続して10分間耐えることで絶縁性能を確認する事ができます。
JESC E 7001「電路の絶縁耐力の確認方法」に記載されているのは各機器の規格での
耐電圧試験に関する内容です。
例)「交流遮断器」電気学会 電気規格調査会標準規格 JECー2300
つまりは、JECー2300の規格に耐電圧試験に関する記載があります。
その耐圧試験に合格している事が確認できたら常規対地電圧を印加しても良いよと言う事です。
もっと簡単に言うと、商品として出す以上はメーカが規格に適合した商品を出品するんです。
そのメーカ出荷記録を貰えば絶縁性能は確認出来た事になります。
機器の使用前の絶縁性能の確認ですが、たまに絶縁破壊を起こす事があります。運搬時に強い衝撃が加わり機器が破損していたとか。ケーブルであれば施工不良により絶縁破壊する場合もあります。メーカの保証が受けられたりもするので、正しく試験して不良の場合には改修を依頼しましょう。
また、高電圧を扱う試験です。くれぐれも安全に細心の注意を払い試験を行なって下さい。
お疲れ様でした!
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